『読むならユングのほうが好き。』 REIKO IMOTO
インタヴュー
by Edrian Aebi 氏 (PEP
+ NO NAME ギャラリー 『Dreamscapes』 個展、スイス・バーゼル市にて。
Basler Zeitung 新聞 、
2006年11月 9日掲載。)
>> 日本人写真家・井本礼子は、「夢」をテーマに選び、ヨーロッパの日常に存在するモチーフたちを取り混ぜながら、夢の雰囲気を視覚化表現する。
そして彼女は創作表現を通して「普遍的無意識」に語りかけることを試みる・・・。
Edrian Abei 氏 (以降、E.A.); 井本さんのこの 『Dreamscapes』
シリーズ作品についてなんですが、これは写真としての「夢日記的」なものなのでしょうか?
Reiko Imoto (以降、R.I.); 実際の夢日記は6年ほど前から書き始めましたが、以来、自分の写真への良いインスピレーションとなっています。
けれど、夢で見たことを、作品でそのまま説明するような表現はしたくないんです。 ただ、夢の持つ雰囲気と、そこから受けた感覚や印象を写真として表現することに集中するようにしています。
夢は自分自身を内側の世界へ結ぶ良い材料となっていますね。
E.A.; この 『Dreamscapes』
展の“副題”は、『〜Echoes of Childhood (子供時代のこだま)』 となっていますが、それにはどういう意図が?
R.I.; 『Dreamscapes』 は主に“子供時代”についての夢をテーマとしたものなんです。 そうですね、日本での自分の子供時代に気持ちを帰還させるような夢がテーマです。(だから、副題にそのヒントを込めました。)
E.A.; 「フロイトの夢分析」
についてはどう考えますか?
R.I.; 潜在意識(無意識)の世界にはとても関心がありますが、私はアーティストで、精神分析学者ではありませんので、自分自身の夢を深く分析したりはしないですね。
そのかわり、潜在意識にある何かを作品を通して提示しようとしています。 それと個人的には、フロイトよりユングの本を読むほうが好きかな。(本当はフロイトは好きではありません。)
E.A.; あなたのその、“パーソナル”な作品に対する鑑賞者の反応は、一般的にどんなようですか?
R.I.; 私の作品を観たあとで、ご自分の見た夢についてお話して下さる方も頻繁におられますね。
実際の日常生活では、普通、「夢」や「潜在意識」などについて考えたりする暇はほとんどない人が多いのでしょうけれど。 私達はみんな、すごく忙しい社会に住んでいますものね。
そういう意味で自分の作品は、日常生活(外的世界)と潜在意識(内的世界)の間にある“架け橋”として、鑑賞者に対し機能することもあるように思います。
E.A.; 夢に対する認識のされ方は、日本とヨーロッパでは違っていますか?
R.I.; (文化的な違いから、)夢に出てくる一般的な“シンボル”などについて、多少違いはあるでしょうけれど、“文化的”要素は自分の作品創りにとって重要な点じゃないんですね。
それでも自分の見る夢は、日本の故郷や地元の場合も、もちろんあります。 ですが、作品創りのために「日本で撮影された写真」をわざわざ使う必要はないと思っています。
私はもう10年以上も日本の外に住んでいますし、どこであれ、私が居る場所で自分のテーマにあった被写体を探しながら写真に収めていくのが自己流のやり方なんですね。
私の写真を見て多くの方たちは、「とてもヨーロッパ的な作品」だと感じておられるようですが、他の方たちは、「とても日本的な作品」だと感じておられるようです。
地理的、または文化的なことは自分の写真表現のポイントではないので、私自身はそれを全く意識していませんが。 この作品は、写真の中の「被写体自身について」ではなくて、それらの「被写体」は夢の世界を表現するための“比喩”であるにすぎないんです。
E.A.; 例えば、ここバーゼルでも、作品創りのための被写体を探すことはできますか?
R.I.; ええ。でも残念ながら今回は十分な時間がありません。ですが、またバーゼルに撮影目的で帰って来たいなあ、とも思っています。
E.A.; あなたのホームページでは、童話やおとぎばなしの世界について語られていますが、あなた自身は“ネオ・ロマンティシズム”のアーティストなんでしょうか?
R.I.; その“肩書き”はなんだかピンとこないんですが、童話などの世界は大好きですよ。 特に、「グリム兄弟」とか。
E.A.; そうですか。
だけど、グリム兄弟の文学は“ロマンティシズム”ですよね?
R.I.; OK・・・。 う〜ん・・・ どちらかと言えば、自分は「シュルレアリスム」とか「無意識の世界の探求」の方面から、後に強い影響を受けたんじゃないかと思いますけど。
E.A.; それでは、最後に、“無意識の探求”は現代のアーティストにとって未だ「重要な課題」だと考えられますか?
R.I.; 「はいッ!」って、あえて大きな声で答えるのみですね!(笑)
The
End.
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(注); 実際のインタヴューは英語で行われました。 この日本語訳はマイルドなテイストに仕上げてみましたが、英語版を生で聞いた人から 「You
sounded like a punk! ( 響きがパンクっぽかった。)」 と言われました。・・・そうかあ、パンクねえ。 “ネオ・ロマンティシズム
(新ロマン主義)” より “パンク” の方が、分りやすくていいわ、と何故だか嬉しくなりました。